作者:佐藤仁史
出版社:研文出版社
出版日期:2013年2月
ISBN:9784876363520
本書は、中国の江南地方という一地域社会に即して、清末民初期(20世紀初頭)に生成した郷土意識を切り口に中国の近代化について検討したものである。郷土意識に着目したのは、近代中国における郷土や地方という概念の登場が、清末に現れた文明や国家といった郷土と対立したり郷土を包摂したりする概念・制度の誕生と不可分の関係にあったからだ。分析に際しては、郷土意識が表現された媒体である郷土志、地方新聞や新たなスタイルの地方志などの出版物の存在に注目した。そこには地域社会独特の文脈において受容された「新観念」が反映されていたからのである。このような出版物を江南地方において出版したのが市鎮在住の生員・商人層を核とする指導層であり、出版量の多さからは市鎮が高い密度で存在した江南社会の地域性を見出すことができる。本書はこれらの史料をもとに、在地指導層が自らの居住する地域社会をどのような尺度を用いて、どのように位置づけるようになったのかを分析している。
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